顎位および顎関節の診査

咬み合わせのずれはどのようにチェックするか?

口の中での咬み合せは習慣的咬合とも言われ、普通下顎を多少ずらして上下の歯が一番咬合しやすい位置で咬み合せています。反射的に上と下の歯を安定して咬もうとする習慣があるので、口の中では適当に下顎をずらして咬み込んでいます。特に歯並びの悪い状況では長く習慣的に咬んでいた咬み合わせがあり、口の中を見ただけでは私たちプロが注意深く診査しても、正確な咬み合わせのずれはわかりません。咬み合わせのずれ-すなわち下顎頭の位置のずれを計るには下のような器具(Face bow、咬合器とCPI)と、咬み合わせのずれを測る種々のテクニックが必要になります。

咬み合わせチェック

上顎の頭蓋の基準面に対する3次元的位置関係を記録しています。この関係を咬合器に再現します。

咬み合わせチェック

上下の歯が接触しない状態でワックスを用いて咬み合せを記録しています。

咬み合わせチェック

上の2つの操作で、頭蓋の基準平面に対する、上下顎の関係が咬合器に再構築されました。

咬み合わせチェック

上下顎の咬合のずれを顎関節レベルでどれくらいずれているか、CPIを用いれば計測することが可能です。

私たちのグループではすべての患者で初診時に顎位(下顎頭位)をこのように計測しています。すべての患者に用いることにより、従来の矯正学の診断では見えなかったものが見えてきました。

口の中の写真は初診時の患者の習慣的に咬みこむ位置、下段の咬合器上の石こう模型は前述の方法で咬み合わせのずれを初診時に測った様子です。大きな咬合のずれが見つかりました。私たちのグループで行なっている診断法の重要性を示しています。前に述べたように顎関節と歯並びの調和がないと関連組織に悪影響を及ぼす可能性があるので、歯並びの治療と同時に咬み合せのずれも出来るだけ改善するように歯を動かす計画をたてます。

初診時

上段の口腔内写真の様な習慣的な咬み合わせの状態と、下段の咬合器上の模型で見られる咬み合わせの状態は同じ初診時の記録ですが、それぞれの記録から治療計画を考えると治療法は大きく異なります。上段の習慣的咬合をもとに治療をすすめると隠れている問題(下顎頭のずれ)をそのまま残すことになります。

顎関節を更に診査しましょう

咬み合わせのずれを計るのはスクリーニングに過ぎません。顎関節に症状がある場合はもちろんですが、症状がない場合ででも、顎関節の問題のサインが見つかった場合はさらに検査をすすめます。

咬み合わせチェック

下顎の動きを3次元的に測っています。口の中の咬み合わせを不安定または安定化させると変化します。

咬み合わせチェック

下顎頭が関節窩でどれほどゆるい状態であるか調べることが可能です。

コンビームCT

日本のコンビームCTは0.1mmに近い精度でしかもメディカル用の通常のCTに比べ、1/15のX線量で撮影できます。しかも非常に限定した部位に線量を当てることも可能です。両側の顎関節撮影の線量は東京-ニューヨーク間往復での飛行中に浴びるX線量の半分ほどです。

子供の場合、 X線量をさらに半分にすることも可能です。普通のX線写真に比べ、3次元構築も可能ですので、得られる情報は桁違いの差があります。この患者の場合、下顎頭は顎関節窩の後方へシフトしています。関節円板が前方へずれている可能性を示しています。

MRI プロトン強調画像(CTと同じ症例)

円板が前方にずれていることがわかります(円板転位)。左右にずれたり、それらのコンビネーションも多く存在します。子供の患者にも多く存在しています。成人の患者では円板の位置が両方の顎関節とも正しい位置にある患者は数パーセントにすぎないでしょう。

MRI 脂肪抑制T2画像(CTと同じ症例)

Joint effusionという炎症状態が認められます。円板がずれると表れてくることが多く、痛みとも関連することが報告されています。