症例レポート
これらのケースプレゼンテーションは会員が国際学会で発表した症例を、患者さんの特別な好意により掲載しております。
臼歯部の叢生を主訴として来院した患者様ですが、特に顎関節症の自覚はありませんでした。問診で顎関節部の疲労感や、たまに開口時に"音がする"との訴えがあり、さらにCPIデータからCO-CR discrepancyが認められたので顎関節症を疑い、スプリント療法を行いました。顎位が安定し、顎関節症状も消失したことを確認後、スプリント療法により明らかになった本来のover-jet、over-biteや下顎のThree-incisorを考慮した治療計画をたて、矯正治療を行いました。
Roth philosophyにしたがい治療したケースですが、顎関節症状の消失による爽快感、審美性、治療後の長期にわたる咬合の安定など患者様の満足度が高いケースです。
本症例は下顎が後退したII級症例である。口腔内においては開咬状態であり、精密検査時に顎位を採得する際、誘導に困難を伴った。またX線写真によって関節頭の変形を認めた。咬合は非常に不安定な状態にあったため、顎位の安定をはかる目的でスプリント療法を行った。その結果、バイトはオープンし、隠されたさらなる開咬が明らかとなった。この開咬量だと矯正単独の治療ではゴールを達成できないため外科手術を併用することとした。術前矯正後、上顎骨臼歯部の圧下と下顎骨の前方移動およびオトガイ形成を行った。この治療計画によって、ロスフィロソフィーの目標である歯の配列、健全な歯周組織、機能的な咬合と顎関節、顔貌の審美性が獲得された。
この症例は他院で7才から15才まで顎関節の雑音、ロッキング、そして顎関節痛を伴い矯正治療がなされていました。13才の時には顔立ちは下顎の右側への偏位が顕著になっていたそうです。この症例は顎関節がいかに大事かを良く示しています。顎関節の問題を把握することなく治療を行なう場合、特に成長期ですと重大な骨格性でのずれを生じ、いかに歯を口の中で並べても意味がないことを臨床医に伝えてくれます。
この状態で来院されますと、まず患者は何を治したいのかを聞きます。彼はまず関節の状態の改善を挙げました。それから顔立ちでの偏位、上下の歯が前突していて口唇の閉鎖がうまくいかないことでした。非常にLogicで緻密な治療が必要となります。顔貌、TMJ、咬合、歯周組織での目標すべてを満足させる超高度な臨床センスが欲求され、見事に結果を出しています。
ちょっと見には普通のアングル1級叢生ケースで、診断していくにつれユニークで複雑なケースであることが解りました。口の中の歯並びより分析する、普段ポピュラーに用いている診断法ですと、とにかく歯列を広げたりストリッピングという歯と歯が隣接する部分(エナメル質)を少し削って歯の混雑を直すか、または小臼歯を抜歯してスペースを作り歯を並べることになります。
しかし、咬合の土台である顎関節の状態は、下顎頭が関節窩よりかなりずれており(下顎をposturing)形態も大きく変化しています。きちんとロスフィロソフィーに合った治療結果を求めるとするならば、まずスプリント療法によって顎位を確認し、本当に存在している問題を焙り出すことから始めます。その結果は、一見単純なケースでも種々考えなければ良く仕上がらないケースであることが歯を動かす治療前にわかりました。
このケースから学べることは、患者の初診時での口の中での咬み合わせを信用してはいけないということです。隠れた問題を探り出し咬み合わせと関係しているかを確認した後、目標に向かって歯の移動を効率よく行なうという、ロス先生が言われた通りの実践を示しています。
