症例レポート

これらのケースプレゼンテーションは会員が国際学会で発表した症例を、患者さんの特別な好意により掲載しております。

本症例は17才4ヶ月の日本人女性で、上顎左右の中切歯と側切歯に強い歯根吸収と、右側第1小臼歯根尖に病巣がみられた骨格性開咬症例である。顎関節CT画像では左右の下顎頭の平坦化と下方への偏位が認められた。スプリント治療後、下顎頭のseatingと下顎位の安定が観察された。その後、術前矯正治療を行った後、上顎に3 pieces Le Fort I osteotomy, および下顎のSSROを施し、機能的咬合、ならびに良好な顔貌が獲得された症例である。

A surgical case with DJD

小松 真佐子

この患者様は、5歳の頃ジャングルジムから落下し顔面を地面で強打。その直後後頭部を踏まれたという外傷の既往があります。顎関節症の既往歴は、高校生のころ、大きく開口するとかきっと音がしたが痛みは無く、どちらの再度かは覚えていないということでした。現症は、欠伸のときに関節に痛みは雑音などを認め、他には頭痛肩こりなどの不定愁訴もありました。

両側顎関節は著しく変形しており、口腔内は開咬を認めました。スプリント療法後、開咬状態は更に著しくなり、臼歯部において5mmのバーティカルコントロールを必要とした為、矯正治療に外科手術を併用して治療しました。

外科矯正治療終了後、まだ咬合が不安定であった為、手術より4ヶ月後に、夜間のみスプリントを装着していただきました。

2年後。再度軽度の開咬を認めました。顎位も安定していると判断し、再診断しました。

その結果、臼歯部で1.5mmから2mmのバーティカルコントロールを行えば、軽度の開咬は改善できると判断しました。上顎両側臼歯部にアンカースクリューを植立し、臼歯部に装置を装着。臼歯部のイントルージョンを行いました。約2年後安定した咬合が得られたため、装置を撤去しました。

前歯の移動で開咬を治療するのではなく、主に臼歯部の移動で治療することにより、審美的にも良好な結果が得られます。臼歯部の移動の際、どのように噛み合わせが変化するのか、予知性をもって診断する為には、安定した顎関節の位置が大切と考えています。

本症例は上下の前歯が出ていることで唇が閉じづらいことを主訴として来院。顎関節症状は左側顎関節より相反性のクリッキングを認めた。顎関節MRI画像では右側は復位を伴わない関節円板前方転移、左側は復位を伴う関節円板前方転移を認め、関節顎関節CT画像では右側の関節頭に軽度の平坦化が認められた。顎位確認のためのスプリント治療によりバイトはオープンした。安定した下顎位より決定した診断・治療方針に基づき治療を行い良好な顔貌および機能的咬合が獲得された症例である。

【目的】前回のRSCIミーティングに於いて、初診時、手術前にスタビライゼーションスプリントを用いSSROを行った症例で、CBCTによる顎関節の関節空隙の三次元的変化の解析を報告した。今回、MRI画像を用い検討したので報告する。

【資料および方法】術前スプリント療法後にSSROを施術し、術後に顎関節をMRIで撮影した顎変形症患者18名36関節について、池田らの方法に準じて、正常群と、円板の転位の程度によりStage 1)発生段階、Stage 2)部分的円板転位、Stage 3)復位性円板転位、Stage 4)非復位性円板転位に分類した。また、CBCTを用いて0.3mm voxelで撮影した顎関節のCT画像を、顎顔面手術シミュレーションソフトウェア(Simplant O&O, Dentsply IH)に入力し、下顎頭および関節窩の3DCGを作成し、関節空隙の距離を1mm毎に色が変化するように色付けした画像(Color-Mapping 3D-TMJ)を作成し、その距離が約1mm以下で5平方mm以上ある近接部位の数が、I. 減少した場合、II. 増減なしの場合、III. 増加した場合に分類した。

【結果】正常群では、8/9関節が増減なしで、1関節が減少、Stage1で1/3関節が減少、Stage2で1/9関節に増加、3/9関節が減少、そしてStage4で8/15関節が減少していた。なお今回は、Stage3に該当する関節はなかった。

【考察と結論】関節円板の変位が大きくなると、手術後に顎関節部での下顎頭の力学的安定性が悪くなる頻度が増える可能性が示唆された。

本症例は上顎前歯の突出により唇が閉じづらいことを主訴として来院しました。初診時口腔内所見では、上下顎前歯部に叢生と唇側傾斜を認め、顔貌所見では、口元の突出とオトガイの後退およびオトガイの緊張を認めました。顎関節所見では、患者が自覚症状を訴えることはありませんでしたが、CO-CRのDiscrepancyが大きく、咬耗を認めたためスプリントを装着し顎位を安定させてから診断することにしました。その結果、初診時に比べて開咬を呈し、垂直的なDiscrepancyの存在が確認されました。安定した下顎位より問題点を導きだし、三次元的な問題点に対して決定した診断・治療方針に基づき治療を行い、良好な顔貌および機能的咬合が獲得された症例です。

本症例は下顎左方偏位を伴う骨格性下顎前突症例である。口腔内において前歯部は反対咬合である。精密検査時に顎位を採得する際、誘導に困難を伴い、またX線写真によって関節頭の偏位を認めた。顎関節に問題があったため、真の偏位量を求めるためと顎位の安定をはかる目的でスプリント療法を行った。その結果、上顎骨の臼歯部の圧下とわずかな右側への移動、下顎の水平的な回転と後方移動およびオトガイ形成を行う外科矯正治療とした。手術前にもスプリントを使用し下顎位を安定化させ、もう一度手術による移動量を精査した後、手術を行った。繰り返しの検討により、機能的な咬合、健康な歯周組織、良好な顔貌が獲得された。

本症例は21歳3か月の女性で、主訴は前歯が出ている上顎前突症例である。初診時検査では下顎の後退が著しく、第一大臼歯関係Angle II級、8mmのオーバージェット、および上下歯列の叢生が認められた。右側顎関節に疼痛を訴え、またCOとCRのずれが大きいことから、スタビライゼーションスプリントにより顎位を安定化させた。その結果、顎関節症状も消退し、ヒンジアキシスを用いてマウントした。顎運動のデータを計測して矯正治療計画を立案した。矯正治療では臼歯部の垂直的なコントロールにより下顎を反時計回転させ、オトガイを前方へ位置させた。また上顎小臼歯の抜歯スペースを用いて上顎前歯を牽引することでオーバージェットが減少し、機能的な咬合と良好な顔貌が獲得された。

上下歯列正中の右方偏位と重度の叢生を伴う上下顎前突症例で、顎関節の疼痛の既往、食事中のクリック、CO-CR discrepancyなどが認められた。スプリント治療を行い、顎位を安定させた後矯正歯科治療を開始した。A.L.D.の解消と前歯後退スペース獲得のため、第一小臼歯を抜歯するとともに、アンカースクリューを使用して臼歯の遠心移動を行った。これにより、前歯の後退量が増加し、側貌が大きく改善した。また、臼歯に圧下力を加えながら遠心移動したため、下顎はわずかに反時計回転し下顎が開大することはなかった。スプリント治療中にクリックが一時強くなったが、最終的には消退した。 治療前後のCT画像から、動的治療中に下顎頭が上方に移動したが、これは臼歯の圧下方向への移動に起因するものと推測している。MR画像でも、同様の所見とともに関節円板の厚径の減少を示す所見も認められた。円板の転位を伴う症例で臼歯の圧下方向への移動を計画する際に、留意すべき点の一つと思われる。

本症例は変形性顎関節症を有し、骨格性の開咬を伴う小顎症です。主訴は前歯で物がかめない、口が開きづらいとのことでした。両側顎関節に疼痛、クレピタス、開口障害および下顎頭の変形を認めました。症状の緩和と下顎位の安定を図るため、スプリントを使用しました。結果、顎関節の症状は改善しました。また、下顎位の変化に伴い、前歯部の開咬は大きくなりました。咬合と顔貌の改善を図るには、臼歯部の圧下と下顎の前方移動を必要としたので、two-jaw surgery とgenioplastyを行いました。術後、顎関節に疼痛や開口障害も出現せず、安定した機能的咬合ならびに良好な顔貌が獲得されました。

もし、これまでの中心咬合位による平行模型、セファロや口腔内の資料に基づく診断法では、下顎位の変化を予見できなかったでしょう。治療中や治療後に下顎位や下顎頭形態の変化が起き、開咬が強くなった時には、治療法の変更や再治療が強いられます。今回、治療前に顎関節の状態を調べ、下顎位を中心位に安定させたことにより、咬合や顔貌の問題点が抽出され、診断と治療計画の策定が可能となりました。それにより、顎関節の状態を恐れずに治療を進めることが出来ました。症例を通じて、下顎位の変化が咬合状態に大な影響を与えることが示されました。

患者は叢生を主訴に来院したが、右側顎関節部に関節雑音と下顎頭の短小化が認められた。

スプリント治療後下顎は右側に偏位し、大きな開咬を呈したため、手術を併用した治療を計画したが患者の同意を得られないため、4/5抜歯と矯正用マイクロインプラントを用いて、上顎大臼歯の圧下と加強固定を図った。治療後、下顎頭は関節窩に正しく位置づけられ、ほぼ機能的な咬合が確立された症例である。

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