症例レポート

これらのケースプレゼンテーションは会員が国際学会で発表した症例を、患者さんの特別な好意により掲載しております。

臼歯部の叢生を主訴として来院した患者様ですが、特に顎関節症の自覚はありませんでした。問診で顎関節部の疲労感や、たまに開口時に"音がする"との訴えがあり、さらにCPIデータからCO-CR discrepancyが認められたので顎関節症を疑い、スプリント療法を行いました。顎位が安定し、顎関節症状も消失したことを確認後、スプリント療法により明らかになった本来のover-jet、over-biteや下顎のThree-incisorを考慮した治療計画をたて、矯正治療を行いました。

Roth philosophyにしたがい治療したケースですが、顎関節症状の消失による爽快感、審美性、治療後の長期にわたる咬合の安定など患者様の満足度が高いケースです。

本症例は下顎が後退したII級症例である。口腔内においては開咬状態であり、精密検査時に顎位を採得する際、誘導に困難を伴った。またX線写真によって関節頭の変形を認めた。咬合は非常に不安定な状態にあったため、顎位の安定をはかる目的でスプリント療法を行った。その結果、バイトはオープンし、隠されたさらなる開咬が明らかとなった。この開咬量だと矯正単独の治療ではゴールを達成できないため外科手術を併用することとした。術前矯正後、上顎骨臼歯部の圧下と下顎骨の前方移動およびオトガイ形成を行った。この治療計画によって、ロスフィロソフィーの目標である歯の配列、健全な歯周組織、機能的な咬合と顎関節、顔貌の審美性が獲得された。

初診時の口腔内の状態では咬耗が強く、単なる叢生の症例ではなく、機能的な問題を有することが予想されました。また、下顎が右方偏位し、左側の臼歯部にはscissors biteを認めました。顎関節にも問題があり、スプリントにて下顎位の安定化をはかった後、再診断し、最終的な治療方針を決定しました。バーティカルコントロールすなわちFacial axisを閉じることにより垂直的問題に対処し、非対称を考慮した歯牙移動を行うことにより水平的問題に対処し、咬合を改善しました。その結果、下顔面高が減少し、口唇の閉鎖が容易となり、顔貌における変化も予想以上に得られました。

本症例は上下の前歯が出ていることで唇が閉じづらいことを主訴として来院しました。初診時口腔内所見では、上下顎前歯部に軽度な叢生と唇側傾斜が認められました。顎関節症状は自覚症状は認められませんでしたが、CO-CRのDiscrepancyが大きく、顎関節断層X線写真像では右側の関節頭に軽度の平坦化が認められたため、スプリントを装着し顎位を安定させてから診断することにしました。その結果バイトはオープンし垂直的なDiscrepancyの存在が確認されました。安定した下顎位より問題点を導きだし、その問題点に対して決定した診断・治療方針に基づき治療を行い、良好な顔貌および機能的咬合が獲得された症例です。

矯正治療で良くみられるタイプの叢生の症例です。家族にTMD(顎関節症)の病歴のある人がいました。そこで見た目に明らかな歯の並びという形態のずれ以外に、顎の位置のずれがTMDを発症する原因の一つとも考えられるので、慎重に顎位を安定させ、その過程で歯を動かしても顎関節は大丈夫かを確認し、顎位でのずれを最小限に抑えつつ口腔内での歯の並びを整えた症例です。ここまで顎位と歯並びを調和させれば将来TMDになる可能性は非常に少なくすることができます。

口の中の正中のずれはいつも注意が必要です。歯の並びの乱れからの正中のずれか、顎位による正中(骨格性の)ずれか、または左右の顎関節の障害によってもたらされるずれかを歯を動かす前に注意深く観察することが重要です。この症例の場合、左側の犬歯がすでに抜歯されてることにより、生じた正中のずれであることが顎関節を含めた歯を動かす前の診断過程により確認されました。その後の適切な矯正治療がなされたことで、主訴である不安定な咬み合わせも解決でき、咀嚼筋の鈍痛も消失しました。

この症例は他院で7才から15才まで顎関節の雑音、ロッキング、そして顎関節痛を伴い矯正治療がなされていました。13才の時には顔立ちは下顎の右側への偏位が顕著になっていたそうです。この症例は顎関節がいかに大事かを良く示しています。顎関節の問題を把握することなく治療を行なう場合、特に成長期ですと重大な骨格性でのずれを生じ、いかに歯を口の中で並べても意味がないことを臨床医に伝えてくれます。

この状態で来院されますと、まず患者は何を治したいのかを聞きます。彼はまず関節の状態の改善を挙げました。それから顔立ちでの偏位、上下の歯が前突していて口唇の閉鎖がうまくいかないことでした。非常にLogicで緻密な治療が必要となります。顔貌、TMJ、咬合、歯周組織での目標すべてを満足させる超高度な臨床センスが欲求され、見事に結果を出しています。

ちょっと見には普通のアングル1級叢生ケースで、診断していくにつれユニークで複雑なケースであることが解りました。口の中の歯並びより分析する、普段ポピュラーに用いている診断法ですと、とにかく歯列を広げたりストリッピングという歯と歯が隣接する部分(エナメル質)を少し削って歯の混雑を直すか、または小臼歯を抜歯してスペースを作り歯を並べることになります。

しかし、咬合の土台である顎関節の状態は、下顎頭が関節窩よりかなりずれており(下顎をposturing)形態も大きく変化しています。きちんとロスフィロソフィーに合った治療結果を求めるとするならば、まずスプリント療法によって顎位を確認し、本当に存在している問題を焙り出すことから始めます。その結果は、一見単純なケースでも種々考えなければ良く仕上がらないケースであることが歯を動かす治療前にわかりました。

このケースから学べることは、患者の初診時での口の中での咬み合わせを信用してはいけないということです。隠れた問題を探り出し咬み合わせと関係しているかを確認した後、目標に向かって歯の移動を効率よく行なうという、ロス先生が言われた通りの実践を示しています。

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